2月28日に東京・渋谷にて第九回勉強会を開催しました。

 ゲストスピーカーには、EMA日本・EMA日本基金理事長・代表の寺田和弘氏をお招きし「同性婚の意味と今後の見通し」についてお話をしていただきました。ある調査によると、LGBT(Lesbian Gay Bisexual Transgender)は人口の7.6%、日本でいうと1,000万人近くいるということです。つまり、私たちの周りにあたりまえのようにいるわけで、LGBTは決して特別な存在ではないということです。

 そしてLGBTの前提となる「性と何か」という問題について、「体(戸籍)」「心(性自認)」「相手(性的志向)」という3つのカテゴリーで見たとき、それぞれがいわゆる男から女までグラデーションでつながっていることを学びました。こうした話を聞く中で改めて自分を見つめたとき、多様なグラデーションのどこかに自分が存在しているのか、自らを単純に「男」あるいは「女」と決めつけることができないという新鮮な驚きがありました。そういう意味で、「性」という視点から見ても、同じ人間は二人といないことを改めて知りました。

 また、「自分は何者なのか」を考えたときに、性別とは自らを形成する根源的なもののひとつであり、そこに社会的規範の「男」「女」を無理矢理当てはめることの窮屈さや、それを無理矢理当てはめられながら違和感をもって生きている人が数多くいることも学びました。

 一方、現実的な問題として、同性カップルが法的補償、とくに子どもの問題や配偶者控除、遺族基礎年金、寡婦年金、相続などで大きなデメリットがあり、そのための制度設計や民法を中心とした法改正が必要であることを知りました。
同性婚やパートナーシップ制度を持つ国は現在世界で約50ヵ国ありますが、そのほとんどが一人当たりのGDP値が上位の国です。ちなみに、現在、日本のGDPは世界第3位ですが、一人当たりでみると世界20位で、やはり同性婚やパートナーシップ制度を持っておりません。

 今回の講義をきっかけに、人権、さらには多様性と普遍性についての認識をさらに深めていきたいと思います。

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一方、両代表は、堀茂樹が「エマニュエル・トッド入門 その3」、岩本沙弓が「2016年の経済展望」というテーマでそれぞれ講義しました。
 
 堀茂樹代表は『シャルリとは誰か』について解説。この本は今年1月に堀茂樹訳で出版されたばかりですが、フランスのみならず日本の社会状況を読み解く上でも非常に有用なものです。しかし、難解であり誤読の可能性も高く、今回の講義は著者の背景や意図を汲んで読み進めるうえで非常に参考になりました。
 
 とくに、原著のサブタイトルに付けられている「宗教的危機の社会学」に関して、「社会学=科学」としての見方を理解することが同書を理解する上で重要であることを学びました。このことは、同書に限らず、今後物事を考えていく上でも非常に大切であると思います。
 
 社会学とはつまり、「人びとがときに本人らの意思を超えた社会的な力によって動かされている=人びとが自分たちの行動に与える意識的解釈は必ずしも正確でない」という視点から分析していくことです。言葉を換えると、「(ある現象を)統計的な数字の中で、時、空間、家族状況、宗教によってどう分布しているかを見ることによってその現象の意味を探求」することであり、昨年のフランスでの全国的なデモもこういう視点から読み解いているのが『シャルリとは誰か』です。

 一方岩本沙弓代表は株価、実質GDP、マネタリーベース残高、日本の財政収支、米国財政収支、米産業と為替動向、大統領選と株価・為替、ユーロ等々、各種経済指標の推移をもとに、経済を俯瞰してみていく大局観について話しました。これは、経済が演繹法や帰納法で証明されるものではなく、まさに生き物であり、社会環境や政治状況、人々のマインドなどさまざまな外的要因で変化していくものであることを改めて学びました。こういうなかで、実際に投資してく場合は、自らの基準(数値)を決め、それを基づいて行っていくことが大切であるということです。

 また日本の経済政策については、家族政策の予算がヨーロッパに比べて低い一方で消費税増税が謳われており、低福祉なら米国型のように消費税なし、高福祉なら欧州型のように消費税有りと一貫した経済政策をとる必要があるのとの指摘がありました。その直後に与野党から選挙に向けて消費税増税取り下げの問題が提起され、また保育園問題なども浮上して非常に示唆的な講義でした。

 今回はグループディスカッションの時間がとれませんでしたが、そのぶん質疑応答が活発に行われ各テーマについて議論を深めていくことが出来たのではないかと思っています。

 @京都の勉強会開催が4月24日にありますので、@東京の次回開催は5月を予定しております。
 詳細が決まり次第、ホームページ上でご案内させていただきますので、次回も多くの方の参加をお待ちしております。
 
(文責:大木啓司)